
新たな蕎麦の魅力に出会える名店 多彩な蕎麦の表情を、お酒とともにゆっくり楽しむ

Streets magazine 編集部
2024年2月1日
###「まっすぐに頑張りたい」そばの魅力に惹かれ進んだこの道
入り口も店内も、まっすぐ伸びた木が印象的なインテリア。ここは、美味しい蕎麦がいただけると、最近通の間で話題の「はちく」だ。
お店の名前の由来は、“破竹の勢い”という言葉。竹のように、まっすぐ頑張っていきたい、という想いが込められているそうだ。
店主・岩田和之さんの料理人人生は、東京の割烹料理店で始まった。その店では10割の手打ちそばを出していたといい、それが蕎麦づくりに興味を持つきっかけになったそうだ。
「そこで蕎麦というものにふれて、東京は“江戸の蕎麦文化”があるし、いろんな蕎麦屋さんに食べに行くようになりました。食べ歩くのが楽しくて、そのうち、そばだけをちゃんと打てるようになりたい、と思うようになって。」
それから、お店とつながりがあった由布院の蕎麦屋さんで、修業を積むことに。さらに数年後、カウンターでの接客も勉強したいと、大分市中心部のダイニングバーに移る。理想の味と空間作りをまっすぐな想いで追求し続け、2022年に自分の店をオープンさせた。

店主の岩田和之さん
そば屋をやりたいわけじゃない?!
お店について尋ねている際、「僕は、蕎麦屋をやりたいわけじゃないんです。」という岩田さんの言葉に、え?と思わず聞き返してしまった。
よくよく聞くと「お店では、お酒と、つまみと、10割蕎麦を提供しています。美味しいお蕎麦を食べてもらいたいというのはあるけれど、楽しい時間を過ごしてほしいというのが一番なんです。日本酒などのお酒や、一品メニューも豊富ですよ。」とのこと。だからあえて、“蕎麦屋である”とはうたっていないらしい。「別に蕎麦を食べなくても、お酒とつまみを食べて、カウンターでゆっくり喋って・・・それでいいんです」と岩田さんは笑った。
蕎麦の評判を聞きつけやってきたお店だったが、メニューを開けば、たしかに一品料理の種類も多い。実際に、蕎麦は食べられないがお店に通う常連さんもいるそうだ。

メニュー表 手間暇かけるという一品料理がずらり
とはいえイチオシはやっぱり蕎麦 蕎麦粉を使った一品料理も大好評
お店の看板は、冷たい蕎麦の食べ比べができるメニューだという。産地や粗さが違う蕎麦が並び、色などの見た目・味・香りの違いを楽しむことができる。どこの蕎麦粉を使うかはその時々で、全国から選りすぐった素材を使用する。つゆのほか塩でもいただくことができ、岩田さんは「それぞれの違いはもちろん、蕎麦の、麺自体の味の美味しさを知ってほしい」と語る。

冷たい蕎麦を食べ比べ 産地を当てにくる常連さんもいるとか
一品料理では、『そば刺し』と『揚げ出しそばがき』が人気の二大巨頭だという。細く、すするイメージが強い蕎麦だが、あえて平べったく切って蕎麦の味をかみしめてもらいたいと提供するのが『そば刺し』。一方、そば粉を練って団子状にし油で揚げたのが『揚げ出しそばがき』で、外はカリっとサクッと、中はモチっと。温かい出汁と薬味と合わせていただく、一番のリピート率を誇るメニューだそうだ。

そば刺し「蕎麦の味をかみしめて」
蕎麦粉を楽しめるメニューを、もっと
「洋食・フレンチ・イタリアンのお店を食べ歩いて、刺激をもらったりします。」岩田さんはいろんな料理からインスピレーションを得て、蕎麦粉の風味を楽しめるメニューを常に生み出し続けているらしい。蕎麦はすするだけじゃない、食べたことのないメニューに出会ってほしいという想いがあるそうで、そんなお店の姿勢に惹かれて訪れるお客さんも多いそうだ。
「かしこまったお店、と思われがちですが、気軽に来てほしいです。僕もくだけた人間ですし(笑)」
たしかに取材中、にこやかに、気さくに語ってくれる姿が印象的だった岩田さん。そして感じたのが、溢れる蕎麦愛。だからこそ、単純に「蕎麦屋さん」だけではないのだろう。
あなたもいろんな角度から蕎麦の魅力に出会いに、ゆっくりお酒と料理を楽しみに、お店の扉を開いてみてはいかがだろうか。