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今治のジャズ喫茶「マニアナ」 マニアの心くすぐる店内と受け継がれるマスターの思い

今治のジャズ喫茶「マニアナ」 マニアの心くすぐる店内と受け継がれるマスターの思い

#今治市内の美味しいグルメ特集

Streets magazine 編集部

Streets magazine 編集部

2024年10月8日

昭和38年創業、今治の街に根付く老舗ジャズ喫茶「マニアナ」。半世紀以上の歴史を刻み、創業者のマスターが作る音楽と織りなす特別な空間には、今もなお多くの“マニアな”ファンが集まる。

「お客さん全員を見渡せる」U字カウンターだからこそ作れる空間

店内に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのはUの字型のカウンター。この独特の配置は、創業者であるマスターの想いが込められている。

「この狭い間取りで、お客さんみんなを見渡すことができる。それがこのお店の特徴です。」と、現在オーナーを務める妻・圭子さんは語る。あえて狭い空間を作り、お客さんみんなと目が合うカウンターを作る事で、初めての人同士でも会話ができるようにという狙いがあったんだそう。

2019年1月、半世紀以上もの間、お店を続けてきた創業者のマスター河野吉広さんが81歳で亡くなり、マニアナはお店を休業することに。

飲食経験も経営経験もなかった妻の圭子さんは”このままお店を続けていくべきか…。誰かにお店を譲るべきなのか…。”など考えたが、「僕らはマスターのカラーを変えてほしくない。このお店の雰囲気を変えてほしくない」という常連客の声に背中を押され、自身でお店を受け継いでいくことを決心。同年4月にはお店を再オープンさせた。

「県外のお客さんが、また来ますって言ってくださったら、それまで頑張りますっていうのが合言葉みたいになってる」と圭子さんは語る。

マニアナ現オーナーの圭子さん

マスターが作り上げてきた「マニアナ」の“マニアな”空間

マニアナの魅力の一つは、その豊富なレコードコレクション。「マスターは若者を応援するのが好きで、将来ジャズ喫茶がしたいなんていう青年に、レコードを譲ってたんです」と圭子さん。現在も数多くのレコードが店内に並んでいる。

いま選曲は圭子さんの好みで行っているそうだが「まだ聴いてないレコードもあるんですよ」と、日々新しい発見があるんだそう。

天井には迷彩柄のテントが張られ、スピーカーは手作りで下向きに設置されている。細部までこだわるディテールが、レトロマニアの心をくすぐる。

「最近、昭和レトロブームで、特に若い女性や県外の方が、こういう雰囲気が好きで来たという人も多いです」と圭子さん。インターネットの普及により、若い方や外国人観光客の来店も増えているそうで「ウルトラマンあったー」と入ってくる女性客もいるそう。店内に飾られた心くすぐる雑貨の存在もマニアナの魅力の一つとなっている。

マスターの味を受け継ぐ「鉄板焼きそば」と食後のコーヒーで落ち着く時間

マニアナのメニューは、コーヒーやミックスジュースやミルクセーキなどのドリンク類、焼きそばや焼きうどん、トーストなどの軽食が用意されている。

おすすめは鉄板で提供される「焼きそば」。キャベツともやし、豚肉などの具材がたっぷりと入っており、甘めのソースの香ばしい香りが食欲をそそる一品。この味もマスターが作っていたレシピを受け継いでおり「マスターが作る焼きそばは、特別なレシピがあるわけではないんですが、どこか懐かしい味がするんです」と圭子さんは語る。

食後にはコーヒーを飲みながらほっと一息。マスターが選んだブレンドのコーヒーは、すっきりとした飲みやすい味わいが特徴である。

「これからも皆さんの居場所になったら…」圭子さんの想い

「マスターは人を差別しないというか、本当に人を大切にする人でした。彼の笑顔を見ると、どんなに疲れていても元気が出るんです。」と語る圭子さん。

マスターの想いを引き継ぎ、お店を続けている圭子さんは、お客様一人一人にとって居心地の良い空間づくりを心がけている。

店内に飾られる創業者・吉広さんの写真

「もっとお客さんを増やす努力をせないかん」と周囲から言われているが「どうやってPRしていいのか分からない」という悩みも抱えている。

それでも「また思い出してもらって、県外の人がまた今治に来られた時に寄ってくれるとか、そういうお店にはしておきたい」と圭子さんは明るく話している。

半世紀以上の歴史を刻み、今なお進化を続けるマニアナ。ジャズと珈琲、そして人々の温かな交流が織りなす特別な空間で、あなただけの「居場所」を見つけてみてはいかがだろう。

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