建築家・丹下健三が未来に託した今治の都市デザイン
Streets magazine 編集部
2024年9月23日
建築家・丹下健三が未来に託した今治の都市デザイン
今治市の中心部に位置する市庁舎群は、世界的な建築家丹下健三氏の手によるものです。丹下氏の設計は、今治の都市デザインを視野に入れたプロジェクトでした。
建築家・丹下健三氏
丹下健三が残した今治市庁舎群
今治市中心部に位置する市庁舎本館。同じ敷地には今治市公会堂、今治市民会館、市庁舎別館が並び都市空間の一体性を醸し出しています。これらを設計したのは戦後日本の世界的建築家・丹下健三氏です。小学校、旧制中学を父の故郷、今治で過ごした縁から市庁舎の設計を依頼され、1958年に市庁舎を竣工。今も使われるこれらの建築物は丹下健三設計の市庁舎群として、建築界から高い評価を受けています。
今治市庁舎本館
今治市の都市デザイン
丹下健三氏の設計は、都市全体のデザインを視野に入れています。今治市庁舎群は今治港と今治駅の中間にあり、広小路と呼ばれる港からの直線道路を市役所が迎えます。丹下健三氏は都市全体の動線や景観を考慮し市庁舎群を配置したのです。市庁舎前の交差点はロータリーとして設計され、現在の市役所駐車場には市民の憩いの広場をイメージしていました。今治港から広小路、市役所へつながる空間には丹下氏が描いた今治の都市デザインへの理念がありました。
広小路
今治市公会堂
斜めの壁を組み合わせた「折板構造」が特徴の今治市公会堂は、今もコンサートや演劇などに使用される今治市の文化芸術の発信拠点です。2011年に取り壊しの議論も沸き起こりましたが、市民から保存を求める声があがったことから、外観はそのままに改修工事が行われました。現在も今治における丹下健三建築の象徴として親しまれています。
今治市公会堂
スクリューオブジェ
2013年に市庁舎の前に新たなモニュメントが誕生しました。世界最大級のコンテナ船(全長320m)に使用するのと同型の直径9メートル、重量約93トンのスクリュープロペラのオブジェです。造船や海運といった海事産業が集積する世界有数の海事都市として「世界に躍進する今治」をアピールするため、地元の今治造船が寄贈しました。背後には丹下健三建築の今治市公会堂があり、新たな今治のシンボルとしてフォトスポットにもなっています。
スクリューオブジェ
今治市の未来
現在の市庁舎本館は1958年竣工で老朽化が進み、耐震問題は避けて通れない課題です。しかし今治市庁舎群は、丹下健三氏の都市設計の理念が色濃く反映され今治市のランドマークとして都市の歴史と未来をつなぐ重要な役割を果たしており、今治市は建物を文化拠点として保存・活用することも検討しています。故郷の偉大な建築家・丹下健三氏の設計を基盤に、さらなる発展を目指すことになります。
今治市庁舎群